企業向けの研修講師として、多くの企業や関係者の方々から様々な課題をお聞きする機会が多くあります。最近は特に「AI」や「DX」に関連した研修が増えており、中堅社員向けの研修などでは、自社や自身の抱える課題を抽出する演習を行うことも多くなっています。

研修の中で、参加者にそれぞれ5件程度の課題を挙げてもらうことで、企業や個人が抱える「困ったこと」や「課題」を明確化します。その後、これらの課題に対して「AIやDX」を活用して解決策の糸口を見つけるという流れです。

業界や職種を超えて共通する課題

研修を通じて得た感覚ですが、業種や職種が異なっても、企業が抱える課題には多くの共通点があると感じます。参加者一人一人は、自分の課題を自分ごととして捉えているため、他の企業や人と比較する機会は少ないものの、俯瞰してみると、誰かがすでに似たような課題に直面し、それを解決していることが多いのです。つまり、「あなたの課題は既に回答を持った誰かがいます」という状況が、よく見受けられるのです。

研修時間が限られているため、課題が漠然としていたり抽象的なものも多いですが、それでも普段から意識されている「問題点」や「課題」であるため、一定の深刻度を伴うケースが多く見られます。

よくある課題と解決策のギャップ

課題を分類してみると、多くの場合、「課題の深掘りが弱い」という共通点があります。具体的な対策に結びつかないため、解決策も短絡的なものに終始しがちです。たとえば、「○○の課題にはデジタル化(システム化)が解決策です」と言ったように、漠然としたシステム導入を挙げるケースです。しかし、これでは「ズレたデジタル案件」となり、根本的な解決には至りません。

また、「属人化や継承問題に対してはマニュアル化が必要」と回答していても、実際にすぐ行動に移す企業は少なく、「忙しくてできない」という理由で先延ばしにされるケースもよくあります。

課題解決のステップ

多くの課題は、以下のように集約されます。

  1. 課題の深掘り(原因究明)不足:課題が漠然としているため、原因究明が進まず、解決策が具体化されません。これを解決するには、第三者の視点で利害関係のない立場から掘り下げることが有効です。
    例えば、「その課題の実害は何か?誰が困っているのか?個人の問題か、共通の認識か?」といった質問から始め、具体的な影響や優先度を明確にすることが重要です。デジタル化に飛びつく前に、現実的で具体的な解決策を探ることが効果的です。
  2. 当事者意識の欠如:課題の解決策がわかっていても、優先度が低く、他人任せになってしまうケースも非常に多いです。特にマニュアル作成や文書化は手間がかかるため、「時間があったらやります」といった言い訳がしばしば使われます。しかし、これも一時的にでも時間を確保し、組織的に進める必要があります。

まとめ

「組織内の人間関係を除く課題」は、ほとんどがこのような共通の要因に集約されます。個々の企業や担当者が抱える問題も、実は既に他の誰かが解決済みであることが多いのです。そのため、広い視点で課題を見直し、解決策を見つけることが大切です。

あなたが抱える課題に対する具体的な解決策を探る際は、ぜひこの考え方を取り入れてみてください。