製造業の現場を視察させていただく機会が多い中で、ただ単に工場を見学するのではなく、効果的にポイントを押さえた視察方法について考えています。今回は、前回の「3Tチェック」に続き、製造現場の管理と品質向上に欠かせない「5S」についてご紹介します。
工場視察で確認すべき基本の「5S」
工場の管理状態を把握する上で、5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)は避けて通れない重要な要素です。工場は常に「生き物」であり、最新の設備を導入しているからといって必ずしも良い工場とは限りません。一方で、老朽化した設備を持つ工場でも、5Sが徹底されていることで、高い品質を維持しているケースも少なくありません。
特に「5S」がしっかりと根付いている工場では、従業員一人ひとりが自らの作業に対して責任感を持ち、品質管理にも細やかに対応しています。これは「次工程はお客様」といった意識を徹底する上で大変重要です。
「5S」の深掘りと意識の重要性
5Sを意識した従業員は、単に作業をこなすだけでなく、異常や変化にいち早く気付くことができ、製品品質にまで影響を及ぼします。例えば、「整理・整頓・清掃・清潔」を意識することで、異音や異臭といった異常の早期発見が可能となり、トラブル防止や製品品質の向上につながります。
「5S」は日本のものづくり文化の象徴でもあり、世界中で高く評価され続けています。トヨタの「カイゼン」なども、その代表例といえるでしょう。
3Tと異なる「5S」の難しさ
「3T(定位・定品・定量)」は工場管理者の意識によって迅速に導入・改善が可能ですが、「5S」は簡単には実行できません。「今日から5Sを始めます」と言っても、従業員一人ひとりがその重要性を自分ごととして理解し、行動に移すまでには時間がかかります。そのため、「5S」の徹底には長期的な視点と専門的な教育が不可欠です。
社内だけで取り組むのが難しい場合は、ぜひ専門家の力を借り、助成金制度なども活用して計画的に進めていくことをお勧めします。従業員全体の意識が変わることで、工場全体の品質が向上し、結果として「Japan as No.1」の復活に一歩近づくでしょう。
最後に
まずは自社工場を5Sの視点から見直し、改善ポイントを見出すことが大切です。
次回は、5Sの視点を取り入れた海外工場の視察についてお話しします。