
生産管理システムをDXの観点から紐解くシリーズブログです。
前回は「汎用品では対応できない領域」について解説しました。システムを細分化して考えることで新たな視点が得られる一方、そこには大きな壁が立ちはだかっています。
それが 社内政治、「既存踏襲派 vs. 改革推進派」問題 です。
社内政治が改革を阻む現実
前回、業界全体の改革が進まない理由として「数十年にわたり変化しない旧態依然の仕組み」があることを指摘しました。しかし、問題はそれほど単純ではありません。現場の現場では、人の想いや過去のしがらみ、そして社内政治が複雑に絡み合い、改革を阻んでいるのです。
以前、生産管理の仕組みを分解して考察しましたが、生産管理システムとは「効率的な理想の仕組み」ではなく、実際は 「自社の運用をそのままシステム化したもの」 に過ぎません。
- 各企業が自社の運用に沿ってシステムを開発
- 同じ目的でも手段やこだわりが異なり、結果的にオリジナル開発が進む
- SIerは共通部分を抜き出し、汎用化を試みる
- しかし、リニューアルの際に「自社の運用と異なる」として却下される
この流れを延々と繰り返し、現在に至っています。
そんな状況の中、「これからは汎用品に業務を合わせていきましょう」と提案すると、既存踏襲派からは以下のような反論が噴出します。
- 「仕事を理解していない人にはわからない」
- 「自社の運用には合わない」
- 「過去からこの形でやってきた」
結果として、改革推進派はなす術もなく、社内政治の中で 古参社員や経営層に論破される という構図が生まれます。
この話、どこかで見聞きしたことはありませんか?
「改革推進派の疲弊」がDX停滞の要因
こうした対立が 数十年にわたり繰り返され、結局、改革推進派は 「戦うのも面倒だ」 とトーンダウンしてしまいます。
一方で、社外に目を向けると「DXだ!変革だ!」と声高に叫ばれています。しかし、現場のリアルを知る者にとっては、それが虚しく響くこともあるでしょう。
では、この問題に特効薬や処方箋はあるのでしょうか?
残念ながら、「既存踏襲派」の意見は絶対に覆らない と認識した方がよさそうです。その背景には、以下の要因が挙げられます。
- 経験者としてのプライド
- 変化への不安
このような葛藤の末に、「自分が現役のうちは既存踏襲でよい」と 古参社員マウント を取るケースも少なくありません。
現状を打破するための2つの戦略
この状況を変えるために有効な方法は、以下の2つです。
- 改革意識の強いリーダーシップを持つ経営者とともにモデルケースを作る
- 小回りの利く企業と連携し、実績を積み上げる
特に JTC(ジャパニーズ・トラディショナル・カンパニー/伝統的な日本企業) においてDXを進めるのは難しいのが現実です。JTCの特徴として、以下のような点が挙げられます。
- 過去の成功体験が強く、他社から学ぼうとしない
- 「自社のやり方が正しい」と優位性を主張する
このような組織文化の中では、単なる掛け声だけではDXは実現しません。変革を推進するためには 「小さな成功体験を積み、実績として示すこと」 が重要です。
DXの本質は、単なるシステム導入ではなく、企業文化の変革 です。社内政治の壁を乗り越え、改革を前進させるために、今こそ具体的なアクションを考えるべき時なのかもしれません。