
生産管理システムをDXの観点から紐解くシリーズブログです。前回は「自社独自の運用ではなく、みんなで考える時期に来ている」というテーマについて解説しました。しかし、それが理想論に聞こえるかもしれません。しかし、いずれその考え方が求められる時代が来ることを理解していただきたいと思います。
DX視点で考える生産管理システムの重要なポイント
これまで、生産管理システムの置き換えというテーマで話を進めてきましたが、今回はもう一つ重要な視点を加えて考えてみます。
生産管理システムは、製販在(製造・販売・在庫)全体をカバーするシステムとして捉えられがちですが、実はその前段階のプロセスに注目することが重要です。つまり、「システムの開始位置」に着目する必要があります。
システムの開始位置とは、製品や加工品の受注が決まり、必要な準備が整った後に、各種パラメータを登録することから始まります。
ここで重要なのが、「諸々の準備が整った後」というキーワードです。この段階で、必要な部材や材料(外注加工を含む)の準備が行われ、それらの情報がシステムに登録されます。
では、この情報は誰が作成し、どのような仕組みで管理されているのでしょうか?
属人化するデータ作成の課題
例えば、ある製品の受注プロセスでは、設計図面を確認し、合意を経て見積りを提示し、受注が確定します。住宅建設を例にすると、設計図面に基づき、壁紙や外装、インテリア、外注加工の見積りを提示し、契約へと進みます。
このように、設計図面の合意から必要な材料の算出、部材の手配、外注先の選定、発注情報の作成までの流れは、どのように管理されていますか?
多くの中小製造業では、このプロセスがベテラン担当者の経験に依存しており、手作業で行われているケースがほとんどです。結果として、運用が属人化し、システム化の議論自体がタブー視されている状況が見られます。
この課題は、
- 経営層にとって「頭の痛い問題」
- 担当者にとって「私しかできない作業」
といった形で、議論が平行線をたどり、システム化が進まない要因となっています。
DXの本質は「データ作成プロセスの最適化」
私自身は、生産管理システムそのものよりも、むしろ「データの作り込みプロセス」にこそDXが必要だと考えています。この部分を詳しく説明するには限界がありますが、要点は「過去のビッグデータを活用し、パターン化する」ことにあります。
しかし、「過去のビッグデータを活用してパターン化する」と言葉で伝えても、多くの人にはピンとこないかもしれません。
よくある反応として、
- 「毎回異なる案件なのでパターン化はできない」
- 「顧客や製品ごとに条件が変わるため整理は不可能」
といった声が上がります。
しかし、実際には、担当者はExcelなどで過去データを参照し、一定の基準に基づいて見積りや発注データを作成しています。つまり、明確な形にはなっていなくても、すでにロジカルなパターンが存在しているのです。
このパターンをデータ化し、システムとして活用することが、DXの大きな鍵となります。
次回に向けて
このテーマについてはさらに深掘りが必要ですが、今回のポイントは次のとおりです。
- システムの開始位置に注目し、データ作成プロセスを最適化することがDXの本質である
- 属人化された作業をパターン化し、データとして活用する仕組みを作ることが可能である
- どんなに正確に導き出しても、誤差は完全には避けられないが、それを許容した上で仕組みを作るべきである
次回は、どのようにデータを整理し、パターン化していくのかについて、さらに詳しく考えていきます。