
DX(デジタルトランスフォーメーション)に関する支援活動やブログ執筆を通じて、私は日々、多くの企業現場の声を伺っています。そこから見えてきたのは、「DXを進めたい企業」と「対応を求められる現場」の間にある大きなギャップです。
本シリーズでは、そんな“難解ワード”であるDXを、順を追ってわかりやすく解説していきます。
前回は「DX化が叫ばれる背景」について、社会的・経済的な視点から整理しました。今回はその中でも特に重要な要素である「テクノロジーの進化と普及」に焦点を当てます。
DXの土台を支える技術革新とは?
DXを語るうえで、何よりも大きな要因となっているのが、ここ数年の技術的な進化です。
かつては導入コストや技術的制約から“一部の大企業だけの話”だった先端技術が、今では中小企業でも活用できる時代になりました。
特に注目されるのが以下の4つの技術です。
- ビッグデータ
- クラウドコンピューティング
- AI(人工知能)
- IoT(モノのインターネット)
これらは互いに連携しながら、業務効率化、新たなビジネスモデル創出など、企業活動に大きなインパクトを与えています。
ビッグデータとは何か?
「ビッグデータ」とは、従来の技術では処理が困難だった、大量かつ多様なデータの集合を指します。よく「5V」と呼ばれる以下の特性がその本質です。
- Volume(量):膨大なデータ量
- Velocity(速度):高速で生成・処理されるスピード
- Variety(多様性):構造化・非構造化を問わず様々な形式
- Veracity(真実性):正確さや信頼性
- Value(価値):分析によって生まれる価値
現在では、センサーやIoT機器、SNS、オンライン取引など多様な手段で日々データが生み出されています。
このデータを効率的に収集・管理するための基盤となるのが、クラウドコンピューティングや分散型データベース技術です。
データから「価値」を生むAI技術
膨大なデータを持っているだけでは意味がありません。そのデータを活かすカギがAI(人工知能)です。
AI、特に機械学習やディープラーニングといった技術は、データの中からパターンや因果関係を見つけ出し、未来を予測したり、業務の意思決定を支援したりする力を持ちます。
「AIの進化はビッグデータの分析から生まれた」と言っても過言ではありません。
クラウド、AI、IoT——DXを支える3本柱の役割
クラウドコンピューティング
インターネット経由で必要な時に必要なだけ、データの保存や処理機能を利用できる仕組みです。企業は自社サーバーを持たずに、柔軟にリソースを拡張・縮小できます。
AI(人工知能)
人間の思考を模倣し、自動で判断・学習・予測を行う技術です。業務の効率化や属人性の排除に大きく貢献しています。
IoT(Internet of Things)
身の回りの“モノ”がインターネットにつながり、リアルタイムでデータをやり取りする仕組みです。
技術が「身近になった」ことの意味
こうした先進技術がコスト面・技術面で現実的になったことで、企業が「業務の見直し」や「新しい価値創出」に踏み出せるようになりました。
たとえば、IoTで収集したデータをクラウドに蓄積し、AIでリアルタイム分析することで、最適な意思決定が可能になります。
つまり、「技術が使えるようになった」だけでなく、「技術をどう業務に取り込むか」が問われる段階に入っているのです。これこそが、DXの真の入り口だと言えるでしょう。
難しい話はさておき、まず覚えておきたい4つのワード
DXを理解するうえで、すべてを詳細に理解する必要はありません。以下のキーワードだけでも押さえておくと、全体像がつかみやすくなります。
- ビッグデータ
- クラウドコンピューティング
- AI(人工知能)
- IoT(モノのインターネット)
これらのキーワードは、今後のDXを考えるうえでの共通言語になります。
次回は、これらのテクノロジーがどのように「現場」に影響を与えるのか、より具体的な事例を交えて解説していきます。