
相続という言葉は誰にとっても身近なようでいて、実際に直面すると想像以上に複雑で専門的な世界です。
法律用語や制度も多く、「初めて知ること」ばかりという方も多いのではないでしょうか。
今回も「門前の小僧解説」として、専門家ではない立場から相続に関する重要テーマを取り上げてみます。
前回は「遺言書は残された人へのメッセージ」と題して、遺言書の重要性を解説しました。
今回は「相続における認知症が事を難しくする」というテーマです。
認知症が相続を複雑にする理由
専門家の方々と話す中で、近年特に増えている話題が「認知症」です。
相続や遺言というだけでも重いテーマですが、「家族に認知症の方がいる」という状況はさらにデリケートで、なかなか公に語られにくい問題です。
厚生労働省の推計によると、2012年時点の認知症有病者数は約462万人。
2025年には約700万人に達すると見込まれています。
今後、認知症の方が増加していくことは確実であり、それに伴って相続手続きの複雑化も避けられません。
たとえば「妻が認知症を発症し、その後に夫が亡くなった」場合、民法上では妻も相続人になりますが、認知症によって判断能力が失われていると、遺産分割協議を進めることができません。
認知症の相続人がいる場合の課題
・認知症の相続人は遺産分割協議に参加できない
・代理で署名・代筆すると無効、場合によっては罪に問われる可能性も
・認知症の相続人は相続放棄ができない
このように、認知症の相続人がいると、残された家族だけでは遺産分割を進められません。
では、どのように対応すればよいのでしょうか。
対応策は「成年後見制度」または「遺言書」
① 成年後見制度の活用
成年後見制度とは、認知症や知的障害、精神障害などにより判断能力が不十分な方の財産管理や生活支援を行う制度です。
家庭裁判所に申立てを行い、後見人が選任されると、法的に認められた代理権のもとで財産や契約の管理が可能になります。
制度の詳細や申請方法は、法務局や専門家のWebサイトを参照するとよいでしょう。
② 遺言書の作成
もう一つの重要な対策が「遺言書」です。遺言書があれば、民法上の規定よりも故人の意思が優先され、法的効力を持ちます。
たとえば「財産を〇〇(子ども)に相続させる」といった内容の正式な遺言書があれば、その意思に沿って相続が実行されます。遺言書があることで、預貯金の引き出しなどもスムーズに行えるケースが多いようです。
結果として、家族間のトラブルを防ぎ、穏やかな相続につながります。まさに「遺言書は遺された人への安心メッセージ」と言えるでしょう。
避けて通れない「認知症と相続」の時代へ
今後、認知症の方が関係する相続はさらに増えると考えられます。
だからこそ、「遺言書」とどう向き合うかがこれからの重要な課題です。
とはいえ、「遺言書なんて難しそう」「誰に相談すればいいのかわからない」と感じる方も多いでしょう。
そんな時は「まちの総務」にご相談ください。
「あなたの困ったは、すでに解決できる誰かがいます。」
信頼できる専門家や相談先をご紹介いたします。
認知症を伴う相続問題は、表立って話しにくいテーマかもしれません。
だからこそ、私たちは一歩踏み込み、安心して相談できる場を提供していきたいと考えています。
【まとめ】
相続において認知症は、法律・家族関係の両面から大きな影響を及ぼします。トラブルを防ぐためには、
- 成年後見制度の理解
- 遺言書の早期作成
この2つが鍵となります。
「備えあれば憂いなし」将来の安心のために、今から準備を進めておきましょう。