
国の政策としても「デジタル人材育成」や「デジタルリスキリング」が強く打ち出され
企業においてもDX推進は避けて通れないテーマとなりました。
私自身も企業向けにデジタル教育の支援を行っていますが
現場で痛感するのは「世代によって伝えるべき内容は大きく異なる」という事実です。
なかでも最も難易度が高いのが、35歳から45歳前後の中堅世代。
本稿では、この世代へのDX教育のポイントと、キーマン選出の重要性について考察します。
中堅世代(35〜45歳)がDXの成否を握る理由
この世代は、いわゆる就職氷河期を経験し、厳しい競争環境の中でキャリアを築いてきました。
一方で、バブル期を経験した上の世代の価値観とも板挟みになりやすく
努力が報われにくいという感覚を持つ方も少なくありません。
年齢を重ねても裁量が限定的だったり、組織の中で「調整役」に回ることが多かったりと
モチベーションに揺らぎを抱えているケースも見受けられます。
だからこそ、この世代に対して単純に「もっと頑張れ」「DXを学べ」と発破をかけるだけでは逆効果です。
一律のリスキリング施策では、方向性を誤る可能性があります。
人材タイプ別アプローチという視点
参考になる考え方として、かつてドイツ軍人のクルト・フォン・ゼークトが示したと
される人材分類があります。
- やる気のある無能
- やる気のない有能
- 有能な怠け者
- 無能な怠け者
やや刺激的な分類ですが、DX教育の現場では意外なほど示唆に富んでいます。
やる気のある無能 : 起爆剤として活かす
職場では少々扱いづらい存在と見られがちですが
新しい取り組みの「空気づくり」には有効な場合があります。
研修やプロジェクト立ち上げ時に、前向きなリアクションで
場を温めてくれることもあるでしょう。
継続的な推進役としては慎重な見極めが必要ですが
初動の勢いをつくる“起爆剤”として位置づけるのは一つの戦略です。
やる気のない有能 : DX推進の最有力キーマン
実は、最もDXと相性が良いのがこのタイプかもしれません。
一見モチベーションが低いように見えても、「面倒が嫌い」という特性は
裏を返せば効率化志向の塊です。
無駄な業務や非効率なプロセスを嫌うため
デジタルツールによる改善や自動化に強い関心を示します。
適切な裁量とツールを与えれば、組織の生産性を飛躍的に高めるキーマンへと
覚醒する可能性があります。
有能な怠け者 : 改善思考のパートナー
「どうすれば楽に成果を出せるか」を常に考えているタイプです。
コンピュータに仕事を任せ、人はより価値の高い業務へシフトする
まさにDXの本質に近い発想を持っています。
この層に対しては、教育というよりも「共に業務改善を設計するパートナー」として
巻き込む方が効果的です。
合理的手段を学ぶ場を提供すれば、自然と成果につながります。
無能な怠け者 : 期待値を調整する
このタイプに過度な期待をかけるのは得策ではありません。
ただし、どこかに“やる気スイッチ”が潜んでいる可能性もゼロではありません。
標準化された型にはめた教育を淡々と実施し、役割を限定する。
組織全体の推進力を落とさない設計が重要です。
中堅世代DX教育の本質は「選抜と配置」
中堅世代全員を同じ方向に引っ張るのではなく、
・誰をキーマンに据えるのか。
・誰に改善設計を任せるのか。
・誰に場の推進役を担ってもらうのか。
この見極めこそが、DX人材育成の肝です。
リスキリングは「学ばせること」が目的ではありません。
組織の変革を前に進める人材を見出し、適材適所で活かすことが目的です。
まずは自社のメンバーを見渡してみてください。
どのタイプが、どこにいるのか。
そして、問いかけてみましょう。
あなたは、どのタイプでしょうか。

