最近、ネット上の情報の応酬に少し疲れを感じている。
そんなビジネスパーソンも多いのではないでしょうか。

政治を巡る論争、芸能ニュースへの誹謗中傷、そして動画プラットフォームの過激なサムネイル。
刺激的で断定的な見出しが並び、反論や糾弾がエンターテインメントのように消費される光景は
もはや日常となっています。

もちろん、私たち自身がクリックし、視聴している側面も否めません。
しかし、閲覧数を競う構造のなかで情報がワイドショー化し、
より過激にエスカレートしているのも事実です。

オールドメディアとネットメディア、そのどちらも偏りうる

近年、「オールドメディア vs ネットメディア」という対立構図が語られることも増えました。
テレビや新聞などのいわゆるオールドメディアだけに接していると
情報の取捨選択や編集方針に影響を受けやすい。
一方で、ネットメディアはどうかといえば
声の大きい一部の意見に引きずられるリスクがあります。

つまり、どちらが正しいかという単純な話ではなく、どちらにも偏りが生じ得るということです。

確かに、これまで可視化されなかった不満や「声なき声」が表に出てきたこと自体は意義があります。
しかし、その情報の奔流に辟易してしまう瞬間があるのもまた、正直なところではないでしょうか。

『いいひと戦略』という考え方

そんな折に目にしたのが、岡田斗司夫氏の著書
超情報化社会におけるサバイバル術 「いいひと」戦略です。

この書籍で提唱されているのが、「いいひと戦略」という考え方です。

超情報化社会においては、「いいひと」という評判こそが、個人にとって最も堅実で強力な資産になる。
これが本書の核となるメッセージです。

ポイントは次の通りです。

・ネット時代におけるリスク管理としての「評判」
・「いいひと」という評価が長期的な信用を生む
・結果として利益や機会の最大化につながる

炎上や分断が可視化される時代だからこそ、「いいひと」であることが
合理的な戦略になり得るというわけです。

重要なのは「戦略」という視点

ここで注目すべきは、「いいひと」という言葉よりもむしろ「戦略」という概念です。
これは単なる理想論や道徳論ではありません。
「みんなで仲良くしましょう」という呼びかけでもない。

むしろ、殺伐とした空気のなかで、あえて攻撃的にならず、感情的な応酬に加わらない。
その姿勢自体が、長期的な信用を守るための選択肢である、という考え方です。

なお、岡田氏が説く本来の「いいひと戦略」は、他者の意見や過去の過ちを許容し
認める姿勢に重きを置いています。
単に波風を立てないという消極策ではなく、寛容さを基盤とした態度と言えるでしょう。

「反論しない」という選択肢

ネット上で強い言葉を投げ合う人々は、一見すると「民意」のようにも見えます。
しかし実際には、発信者も反論者も一部に過ぎず、多くの人は「そうだそうだ」と思いながら
あるいは「それは違うのでは」と感じながらも、静かにスルーしています。

この“スルーする力”こそ、現代における一つの「いいひと戦略」かもしれません。

近年は「〇〇の壁」といった象徴的なフレーズが生まれ
敵対構造が強調されやすい状況が続いています。
事実が明らかになること自体は健全ですが、罵詈雑言の応酬が常態化すると
心が消耗してしまいます。

DX時代に求められる「評判マネジメント」

DX(デジタルトランスフォーメーション)が進むほど
個人の発信履歴や評判は可視化され、蓄積され続けます。

企業だけでなく、個人もまた「ブランド」を問われる時代です。
そのとき、攻撃的な姿勢で得た一時的な注目と、「いいひと」として積み上げた
信頼のどちらが長期的な価値を持つのか。

答えは明らかでしょう。

ネットを単なるはけ口にするのではなく、成熟した「意見の場」として活用する。
そのためにこそ、「いいひと」を保ちつつ、冷静に状況を見極める戦略的な姿勢が求められています。

殺伐とした現代だからこそ、静かで穏やかな態度が、最も強い武器になるのかもしれません。