前回の振り返り
前回の「デジタル化が進みにくい中小企業の現状把握」では、企業の規模により「守り」と「攻め」ができる企業に差が出ることを取り上げました。今回は従業員100名以下の中小製造業を対象に、デジタル化の課題解決策を探りながら社内体制を構築していく方法を考えます。
IT担当とOA担当、IT担当部署の違い
まずは用語の定義から始めましょう。同じ文脈でも言葉の定義が異なる場合があります。
IT(情報技術)
ITは情報技術全般を指し、コンピューターシステム、ソフトウェア、ネットワーク、データベース、セキュリティ、ハードウェアなどが含まれます。ITの目的は情報の管理と処理を支援することです。IT担当者は、情報技術全体を管理・サポートし、組織の情報インフラを維持します。
OA(オフィスオートメーション)
OAは主にオフィス業務の自動化と効率化を指します。これには文書処理、コミュニケーション、会議、スケジュール管理などが含まれます。OAは情報技術の一部であり、オフィス内での業務プロセスを向上させることを目的とします。
関連技術
- IT: プログラミング、データベース管理、ネットワーク設計、サイバーセキュリティなど、幅広い技術と分野が含まれます。組織全体の情報技術に関連する要素に焦点を当てています。
- OA: ワードプロセッシングソフトウェア、電子メール、カレンダーアプリ、会議システムなど、オフィス業務向けのアプリケーションとツールに関連しています。
このように、IT担当者は情報技術全般を管理し、OA担当者はオフィス業務の効率化を主に担当します。しかし、現代の企業では「OA担当」という言葉は過去のものとなり、幅広い範囲を含む「IT担当」に集約されつつあります。
IT担当者とIT担当部署の違い
企業の従業員規模によって、単なるIT担当者と組織だった「IT担当部署」の違いが出てきます。従業員100名前後を境に、以下のような違いが見られます。
単なるIT担当者
「OA担当からIT担当へ」として「ひとり情シス」として活動するケースが多いです。この場合、IT担当者は専任ではなく、他の業務と兼任でボランティア的な役割を果たします。
組織だったIT担当部署
部署としての職務権限があり、部門長(多くが兼任)も付き、組織としての管理体制が整っています。このような体制では、担当者の職務に対するモチベーションが違ってきます。
現状の中小企業での課題
多くの中小企業では、PCに詳しい従業員がIT担当者となり、徐々に「ITお困り相談員」としての役割を担うケースが多いです。しかし、このような体制では担当者のモチベーションが低下し、不満が溜まりやすくなります。
IT担当者がボランティア的な立場で活動すると、やがて不満が蓄積し、問題分子となることもあります。企業としては、このような状況を避けるために、適切な体制を整えることが重要です。
次回は中小企業の経営者や管理職の立場からの視点で、デジタル化の課題と解決策を探っていきます。