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生産管理システムをDXの視点から紐解くシリーズブログです。
前回は「生産管理システムは業種や業態で異なるのか?」というテーマについて解説しました。システムを細分化して見ていくと、運用方法には違いがあっても、管理の本質は共通している点が多いことが分かりました。
では、なぜすべての企業が汎用品のシステムで統一できないのでしょうか?本記事では、その理由を探ります。
汎用品ではなぜ対応できないのか?
前回の議論からすると、「すべて汎用システムで統一すればよいのでは?」という疑問が生まれます。なぜ、生産管理システムの分野では絶対的な汎用品(いわば業界標準のエース級)が存在しないのでしょうか?
この問いに答えるために、まずは別の視点から考えてみます。
会計システムの事例に学ぶ
たとえば、会計システムを例に挙げると、すべての企業が同じような管理(会計処理や決算処理)を行っているにもかかわらず、
- 税理士に丸投げする企業
- 様々なメーカーの汎用システムを導入する企業
といったように、実際の運用はバラバラです。
本来、税金を納める側がわざわざ投資をしてシステムを導入し、手間をかけるのは不合理ではないでしょうか?むしろ徴収する側がシステムを提供すべきとも考えられます。しかし現実には、納税側の企業が各社独自のシステムを使い続けています。
この背景には、各企業が長年培ってきた業務フローに基づいた「こだわり」があります。単に汎用品を導入すれば済む問題ではなく、業務の歴史や文化に根ざした運用があるため、一律の標準化が難しいのです。
システムの成長と進化のジレンマ
システム販売会社の視点に立つと、本来であれば共通の仕組みを提供できるはずなのに、なぜ各社が独自性を持たせたシステムを求めるのでしょうか?
これは、ユーザーニーズに寄り添いながら成長してきた結果です。老舗のシステムメーカーほど、過去のユーザー要求を反映し続けた結果、大きな変革が難しくなってしまう傾向があります。その間に、クラウドを活用した新興のシステムが急成長し、従来のシステムとの差が広がっています。
企業側も、小さなこだわりを捨てれば、汎用品を活用できる可能性があります。しかし、
- 変化を嫌う文化
- 過去のしがらみ
- 会計事務所などの業界習慣
といった要因が、システム統一のハードルとなっています。
「自社独自」のこだわりは本当に必要か?
「弊社は他社とは異なるので、汎用品では対応できない」
この言葉をよく耳にしますが、本当にそうでしょうか?
もし、外部から経営者や管理者が来たり、外資系企業に買収された場合でも、その「こだわり」は守り抜けるものでしょうか?
もしかすると、そのこだわりこそが非効率や無駄な出費(オリジナル開発)を生んでいるのではないでしょうか?また、それは個人の主観なのか、企業の総意なのか?
このように考えていくと、「標準化できる部分」と「オリジナリティが必要な部分」を明確に分けることが重要になります。
システムを分解して考える
コンピュータシステムの基本構成を整理すると、以下のようになります。
- データベース(DB):中央に配置され、情報を一元管理する
- 入力(インプット):マスター情報や各種データの登録
- 処理ロジック:データを加工・分析
- 出力(アウトプット):帳票作成やレポート表示
この基本構造を踏まえると、生産管理システムも一つひとつの機能はシンプルな組み合わせでできています。しかし、各社の独自性が加わることで複雑化してしまうのです。
7割を標準化、3割をカスタマイズへ
仮説として、生産管理システムの処理を俯瞰して見ると、7割程度は共通化できるのではないか?と考えられます。
残りの3割については、
- オリジナル機能を残す
- 係数(パラメータ)を設定し自由度を持たせる
といった方法で柔軟に対応することが可能ではないでしょうか?
まとめ:共通化とカスタマイズのバランスを見極める
この視点で共通項を見出せば、
- DB構成、入力、定型出力部分は汎用品を活用
- その他の部分はオリジナル開発や自由検索機能を提供し、Excel出力で加工できるようにする
といった形で、効率的なシステム運用が可能になります。
次回は、さらに踏み込んで「汎用品ではまかなえない範囲」について考察していきます。