AI(人工知能)は、今や現代の技術革新の象徴とも言える存在です。
その一方で、過剰な期待や根拠の薄い恐れが先行し、冷静な理解が追いついていない場面も多く見られます。
今回は、「AIに対する過大評価」と「過小評価」、それぞれの観点から考察してみたいと思います。

AIはここまでできる?――過大評価されがちなポイント

1. AI=万能の知能?

「AIが人間の知能を超えて、あらゆる仕事を奪う」という論調は、メディアでも頻繁に見かけます。
しかし実態は、AIの多くは特定領域に特化した「狭いAI(Narrow AI)」であり、汎用的な知能(AGI)にはまだ遠く及びません。

たとえば、囲碁やチェスで人間を打ち負かすAIがあっても、それが人の感情を理解したり、複雑な人間関係の中で判断を下すことはできません。

2. 「AIに仕事を奪われる」は本当か?

AIによる自動化が一部の職を置き換えることは事実ですが、それと同時に新たな職種や役割も生まれています。
歴史的にも、技術革新は雇用の喪失だけでなく、雇用の創出も伴ってきました。恐れるより、適応する視点が求められます。

3. 自動運転はすぐに実現する?

自動運転車の進化も話題ですが、完全な自動運転が社会に浸透するには、まだ乗り越えるべき課題が山積しています。
特に、安全性や法律、予測不能な状況への対応といった側面では、技術的にも社会的にも道のりは長いのが現状です。

実はもっとすごい?――過小評価されがちなAIの力

1. 医療分野での革新

AIはすでに医療の現場で活用が進んでいます。画像解析による早期診断支援や、個別化医療の推進など、人命を救う場面でも効果を発揮しています。
しかし、一般にはまだその可能性が十分に認識されていません。

2. 教育の個別最適化

AIは、学習者一人ひとりの理解度やペースに合わせたパーソナライズ学習を可能にします。
これにより、教育の質が大きく向上する可能性を秘めていますが、日本ではまだその活用が限定的です。

3. 環境・サステナビリティの分野

気候変動の予測、エネルギー管理、スマート農業など、AIは持続可能な社会の構築にも欠かせない存在となりつつあります。
にもかかわらず、これらの取り組みはまだ「未来の話」として片付けられがちです。

ここからは“偏見”です(笑)――私が感じるAI評価のリアル

さて、ここまではいわば「教科書的」な内容でしたが、ここからは少し主観も交えてお話しします。
個人的には、AIに対する過大評価は“他人任せの期待”、そして過小評価は“自社視点に閉じたデジタル理解”にあると感じています。

◆ お祭り騒ぎと過大評価の現実

現在、AIを巡っては世界的なビッグテックの覇権争いが繰り広げられ、それに群がるように新しいビジネスやプロジェクトが次々と立ち上がっています。
「AIによって○○の仕事が数年後には消える」といった記事も日常茶飯事。

もちろん期待すること自体は悪くありません。
ですが、その期待が「誰かが何とかしてくれるだろう」という他力本願な形になっていないでしょうか?

例えるなら、政治に対する期待と似ています。
現実離れしたビジョンに拍手を送りながら、自分の現実との接点が曖昧なまま、「凄そうだ」とだけ思っている状態。
これが過大評価の本質だと思います。

◆ “業務のちょっとした改善”で満足していませんか?

一方、過小評価も根深い問題です。
AIに関するセミナーなどでは、若手社員や経営者と「AIで何かできないか?」と議論する機会が増えています。
その中でよく感じるのが、AIを自社の改善ツールレベルにとどめてしまう認識です。

例えば、「請求書処理を自動化したい」といった話は確かに立派な改善ですが、それはデジタル化(OA化)の範疇です。
AIの価値は、その一段上――インプット情報そのものの“構造変革”にこそあると思います。

DXとAIの本質的な接点はどこにあるか?

私が考えるAIの真の価値は、以下のような構造にあります:

  • 各所からIoTなどで自動収集したデータをクラウド上で統合
  • それをビッグデータとしてAIが解析
  • ユーザーごとに個別最適化された情報や提案を提供

このように、単なる業務自動化ではなく、情報の本質的な扱い方そのものを変えることが重要です。

◆ 例えば「税務処理」はなぜ個別対応なのか?

身近な例として、企業や個人事業者が行う税務処理、申告、納税などの作業があります。
これらは本来、国が提供すべき仕組みによって一元化されるべきなのに、実際は企業側がそれぞれ対応し、人手やコストをかけています。

これが顧客視点で考えられた仕組みとは言えないことは明白です。

最後に――AIに本当に求めるべき価値とは

AIに過剰な期待を寄せる一方で、実務レベルでは“便利なツール”としてしか見ない。
この両極端の姿勢が、AIの真の価値を見誤らせているのかもしれません。

本当にAIの力を活かすには、
「目の前の業務改善」にとどまらず、
“根本的な情報インフラそのものを変える”ような発想が求められます。

もちろん、これは一企業や一個人がすぐに実現できるものではありません。
ですが、こうした視点が業界や社会に広がっていけば、AIの力はもっと多くの人の役に立つはずです。

「そんな未来もあるかもね」くらいで聞き流していただければ幸いです。