AIの進化が話題になるたびに、「AIでなくなる仕事」という刺激的な見出しがメディアを賑わせます。しかし、実際にはその議論には的を射た部分もあれば、どこかモヤモヤした部分もあります。本コラムでは、このテーマをより具体的に掘り下げ、業務ごとに整理して考えてみたいと思います。

前回の記事「AIによって変わる士業の未来:会計処理編」に続き、今回は「給与計算業務」に焦点を当てます。


給与計算業務の課題:本当に今のやり方が必要ですか?

給与計算業務を担う社労士の役割について、全てを把握しているわけではありませんが、ここでは主に「就業規則」と「勤怠・給与計算(企業サポート)」に絞って考えます。

1. 就業規則:オリジナル性の再考

「就業規則は会社ごとにオリジナルが必要か?」という問いに、多くの方は「当然必要だ」と答えるでしょう。しかし、少し視点を変えてみませんか?

例えば、経営者が外資に変わる場合や、業界標準のベストプラクティスに合わせる場合、現在の細かなオリジナルルールがそのまま通用するでしょうか。8割程度の規則は共通テンプレートで対応できるのではないかと考えます。その上で、どうしても必要な2割にだけこだわる形が現実的ではないでしょうか。

さらに、防御的な就業規則についても同様です。裁判を回避するための対応は、過去の判例を活用するAIの得意分野です。もちろん予期できない事態もありますが、大半の課題はデータ解析でカバー可能でしょう。

2. 給与計算の効率化:その「こだわり」は必要か?

給与支払い条件(例:月給、日給、時給)や残業代の計算ルールなど、企業ごとの細かな違いがありますが、それらが本当に「こだわるべき点」なのかを再考する必要があります。これらの複雑さが、結果的にデジタル化や業務効率化を阻害し、無駄なコストを発生させている可能性はありませんか?


勤怠・給与計算業務の現状と課題

給与計算は、企業運営において欠かせない業務です。特に月末処理に追われ、ミスが許されない中で、多くの担当者がストレスを抱えながら業務をこなしています。しかし、現在の方法が最適解とは言い切れません。

課題例:アナログな情報共有
多くの中小企業では、給与計算業務を外部の社労士事務所に委託しています。しかし、情報のやり取りは未だにFAXや郵送が主流で、送付されたPDFや画像データを手入力で転記している例も少なくありません。この転記作業はミスのリスクが高い上、付加価値を生まない単純作業です。


DXで変わる業務のあり方

では、この業務をどのように変えていくべきでしょうか?

  1. 就業規則の汎用化と統一
     給与体系やルールの共通化を進めることで、複雑な業務をシンプルにできます。これにより、デジタルツールやAIの導入もスムーズになります。
  2. 仕組みの統合とデジタル化
     次のステップとして、既存ルールを見直し、業務をデジタルツールに最適化することが重要です。このプロセスでは、DXの視点が欠かせません。

給与計算の具体的な仕組みについては、次回以降で詳しく解説します。業務の効率化とストレス軽減を目指して、一歩ずつ変革を進めていきましょう。


次回予告:給与計算システムの進化とAIの役割
次回は、具体的なデジタルツールやシステム統合の事例を通じて、DXによる給与計算業務の進化について考えていきます。