AIの進化が話題になるたび、「AIで消える仕事」というセンセーショナルなテーマが注目を集めます。確かに的を射ている部分もありますが、一方で少し焦点がずれているように感じることも少なくありません。
前回はAIで消える仕事ランキング「給与計算業務」について考えてみました。
今回は、こうしたテーマについて冷静に整理し、特に「システム開発」という分野に焦点を当てて考えてみたいと思います。
AIが進化する中での「システム開発」の未来
個人的な見解ですが、コンピュータで動作するものは全てAIで代替可能になると考えています。特にプログラム開発の分野ではその影響が顕著に現れるでしょう。しかし、「仕事がなくなる」という極論には慎重であるべきです。そのため、システム開発についても一括りに語るのではなく、いくつかのケースに分けて整理してみます。
これまで、人類はさまざまなプログラミング言語を駆使してシステムを開発し、社会を進化させてきました。しかし、アプリケーションの多様化が進む中、クラウド技術の発展やSaaS(Software as a Service)の普及によって、「アプリの民主化」が加速しています。これに伴い、今後はオリジナルのシステム開発も、汎用性の高いサービスとのハイブリッドモデルに移行していく可能性があります。
行政手続きシステムの現状と課題
今回のテーマでは、特に市役所や役場など、行政サービス向けシステムに焦点を当てます。近年、デジタル庁を中心に行政のデジタル化が進み、方向性としては非常に良い流れです。とはいえ、各自治体が独自に開発してきたシステムにはまだ多くの課題が残っています。
かつて、行政ごとに業務内容が似通っているにもかかわらず、技術力や職員の意識に差があるために、それぞれ独自の合理化システムを開発(外注を含む)してきました。その結果、膨大なコストをかけたオリジナルシステムが各地で乱立してしまいました。
現在は「ガバメントクラウド」構想のもと、こうしたシステムの統合が進められています。行政サービスは基本的に共通性が高く、各自治体が独自開発を行う必要性は本来ありません。しかし、すでに現場で運用されているオリジナルシステムの存在が、統合の大きな障害となっているのも事実です。
統合化がもたらすジレンマ
統合が進む中で、現場の設計思想が統一されていないケースでは、システム間の互換性がまるで異なる言語間のコミュニケーションのように複雑化します。すでに独自の進化を遂げた自治体が反対することも予想され、統合の過程で大幅な改修を余儀なくされるでしょう。一方で、デジタル化が遅れている自治体の方が、一気に新しい仕組みへ飛躍的に移行する可能性もあります。
まとめ
行政サービスシステムにおける「AI化」の進展は、共通部分を抽出し汎用的なシステムを構築することが重要なステップです。本稿では、この共通性に着目する重要性をお伝えしました。次回は、さらに具体的な事例を掘り下げていきます。
続きは「AIで変わる未来の仕事:行政手続きとシステム開発(Part 2)」でお届けします。