AIの進化が話題になるたび、「AIでなくなる仕事」というキャッチーなテーマが注目を集めます。この手の話題には、多くの人が不安を覚える一方で、内容が的を射ているようで射ていない、そんなモヤモヤした感覚を抱くことも少なくありません。今回のコラムでは、具体的な業務に焦点を当て、AIによる変革がどのように起きるのかを考察します。

前回は「行政サービス業務ほどAIで統合すべき」というテーマで、全国民に共通する業務の効率化と利便性向上について取り上げました。今回は「まちの総務」という視点から、企業のバックオフィス業務(総務・人事・経理など)がどのようにAIで効率化されるのか、士業のAI化と併せて考えてみたいと思います。


AIで進化するバックオフィス業務とは?

バックオフィスとは、企業内で裏方の業務を担当する部門や機能を指します。具体的には、経理、人事、法務、ITサポートといった管理・支援業務が含まれます。これらの業務は、企業戦略を支える重要な役割を担う一方で、一般的に企業間で共通するプロセスも多く、AIやクラウドサービスによる効率化の可能性が期待されています。


なぜ統合が進まないのか?

バックオフィス業務においては、企業の歴史や文化、独自の運用が「オリジナル性」や「こだわり」として根付いている場合が多いです。このこだわりが、業務の標準化や統合化の障壁となり、結果的に非効率な状態を助長していることがあります。

こうしたこだわりを全体最適の観点から見直し、必要以上の個別対応を減らすことが重要です。例えば、共通業務をAIに任せることで、各企業は自社の強みやコア業務に集中できる環境を整えるべきです。


AIで実現する「まちの総務」の未来像

バックオフィス業務のAI化により、以下のような未来が考えられます:

  • 統一された行政クラウドAPIの活用
    行政情報を共通プラットフォームで管理し、企業間で効率的に活用。
  • 士業監修の下での自動化
    給与計算や会計処理をAIが行い、人間は例外処理や監査に専念。
  • 申請処理のクラウド化
    申請や承認業務をクラウド上で完結し、紙ベースの手続きを大幅削減。
  • 企業独自のニーズへの対応
    マイナンバーやログイン管理で必要な差異を吸収。

これにより、バックオフィス業務の多くが標準化される一方で、企業ごとの微細な調整も可能となります。


AI化に対する心構え

「AIで仕事がなくなる」という不安を抱える方も多いかもしれません。しかし、重要なのは「その仕事が本当に自分にしかできないのか?」を見つめ直すことです。属人化を維持し続けるのは、進化を妨げる行為になりかねません。

一方で、人事や総務といった「人」にまつわる業務には、AIで代替できない要素も多く含まれています。人間ならではの共感や判断力が求められる場面では、引き続き人が中心となるべきでしょう。


「まちの総務」的発想で近未来を語ろう

企業ごとのバックオフィス業務を完全に統合することは難しいかもしれません。しかし、地域や業界単位で共通の仕組みを活用する「まちの総務」的発想が広がれば、全体の効率性は飛躍的に向上するでしょう。

AIの力を借りながら、無駄を省き、人が本来力を注ぐべき「価値ある業務」に集中する未来を一緒に考えませんか?次回は、さらに具体的な事例を交えつつ、バックオフィス業務の進化について掘り下げます。