
「古いシステム屋」として、最新技術にはやや疎い自覚もありますが、システムの基本的な考え方については一定の理解をしているつもりです。
本記事では、過去の仕組みの良さと、現在のテクノロジーの進化をうまく融合させながら、今後のシステム開発がどうあるべきかを考えてみたいと思います。内容は専門的すぎず、かといって表面的すぎない中庸を目指します。専門用語も出てきますが、ご容赦ください。
クラウドはDXの「本質」に近づけているか?
「クラウド化=オンプレからの単なる移行」と考える方もいますが、これは本質とは異なります。クラウドの持つ真の価値は「分散されたリソースの統合」と「誰でも利用できる民主化された環境の提供」にあります。
実際、多くの経営者と話す中で、「デジタル投資がサブスクリプション型に変わって負担感が増している」といった声を聞くようになりました。ですが、これも視点を変えれば、統合による最適化や柔軟な連携が可能になる兆しでもあります。
単体SaaSの限界とAPI連携という突破口
今やSaaSは、低コストかつ高機能なツールとして広く普及しています。しかし多くのSaaSは単体完結型であり、マスター共有や他システムとのデータ連携には難があります。
結果、複数のSaaSを導入しても、それぞれに同じ顧客情報を登録したり、データを二重管理したりといった非効率が発生してしまいます。提案する側としても歯がゆい状況です。
この課題の突破口となるのが「API連携」です。各SaaSの機能をそのまま活かしつつ、裏側でデータをつなぐ仕組みが必要です。
今求められるのは「クラウド型DBMS」
すべてを1つの巨大なシステムに統合するのではなく、「SaaSはそのまま」「データベースは裏側で共通化する」——これが今、多くの企業にとって現実的な理想形ではないでしょうか。
たとえば、マスター情報は共通DBで管理し、業務システムはそのデータを参照。そうすることで、分析や横断検索、業務の標準化が大幅に進みます。
もちろん、業界横断での標準化や非営利団体による共通基盤整備が前提となる場面もありますが、こうした動きはすでに始まっています。
クラウド型ポータルサイトの必要性
最終的に目指したい姿は、以下のような仕組みです:
- 企業は業務単位で必要なSaaSを選択
- それらを共通ポータル画面で統合
- 裏側では共通DBでマスター情報を管理
- ノーコードアプリで検索・出力・分析も自由自在
- 必要に応じてExcelにも連携可能
この構成を一言で表すなら「かつてのC/S(クライアント・サーバー)システムの進化形」でしょう。
サーバー側(クラウド)にDBMSを置き、クライアント側(SaaSやExcelなど)は多様化。すべてがクラウド上で連携・統合される。そんな世界観です。
ノーコード×SaaSの統合時代へ
現在は「大規模な統合システム」から「個別最適なSaaS」への転換期(イマココ)ですが、次のステップは「SaaS同士の連携による新しい統合」だと考えています。
ノーコードでAPI連携ができ、ユーザーが自社用の業務環境をポータル内で構築できる世界。そこに、データベースの統合という視点を加えることで、より自由度の高い業務システムの実現が可能になります。
おわりに
クラウドやSaaSは「便利で安い」だけで終わってはもったいない。今後は「つながる」「共通化する」「自由に使える」時代へと進化していきます。
この流れに乗るためにも、私たちは技術の本質を見極め、適切な「次の一手」を考えていく必要があるのではないでしょうか。