〇〇協会様や行政団体などからお声がけをいただき、定期的に企業研修やセミナーを実施しています。
主なテーマは「デジタル化」「DX推進」「業務効率化」などですが、さまざまな業種・職種の方々と
接しているうちに、どの現場にも共通する“ある傾向”が見えてきました。

この共通点をもとに、私自身の研修スタイルや伝え方も徐々に洗練され
一定のパターンとして整理できるようになっています。
今回は、そのエッセンスを共有したいと思います。

■ 研修に参加できない理由と、その裏にある“もったいなさ”

研修の案内をお届けすると、多くの企業で耳にするのが
「忙しいので担当を出せません」という声です。

確かに、現場が多忙なことは事実です。ですが、この理由には少し“もったいなさ”も感じます。
「忙しいから参加できない」という発想は、現状を打破するきっかけを自ら閉ざしてしまうものです。

日々の業務に追われるなかでこそ、外部の空気を感じ、視野を広げ、マインドをリセットする時間
大切になります。特に長時間の研修では、腰が重くなる気持ちも理解できますが
それでも参加を決断した企業・上司の方々には「変化への期待」が込められています。
その期待に応えるのが、講師の使命です。

■ 座学よりも「演習」に価値がある理由

研修内容は大きく分けて「座学」と「演習」の二本立てです。
座学ではDXやデジタル活用の歴史的背景、技術トレンド、将来像などを体系的にお伝えします。

ただし正直なところ、こうした内容は“ググれば出てくる”一般論にすぎません。
そのため私は、なるべく現場での具体的な事例や実体験を交え、リアリティを持ってお伝えするようにしています。
(ちなみに、このブログがその“ネタ帳”の役割を果たしています。)

そして何より力を入れているのが「演習」です。
少人数のチームで課題を出し合い、ディスカッションしながら解決策を導く。
まさにミニプロジェクト活動の疑似体験です。

この演習の本質的な価値は、導き出される答えではなく、議論のプロセスそのものにあります。
普段とは違う脳の使い方をしながら、他者の意見を受け止め、妥協点を見出していく。
その過程で、参加者は自然と協働と共感のスキルを身につけていきます。

■ 研修の価値を高めるキーワード「トランザクティブ・メモリー」

ここで重要な概念を2つ紹介します。

  1. トランザクティブ・メモリー(Transactive Memory)
  2. あなたの困ったはすでに解決している誰かがいます

トランザクティブ・メモリー(Transactive Memory)

まず「トランザクティブ・メモリー」とは、
“誰が何を知っているか”を組織全体で把握し合うことを指します。

すべての人が同じ情報を知っている必要はなく、
「この分野は〇〇さんが詳しい」「この課題なら△△さんが助けてくれる」
こうした“知識の所在”を共有しておくことが、チームの強さにつながるのです。

研修で名刺交換をしてもらうのは、この“知のネットワークづくり”の第一歩でもあります。

あなたの困ったはすでに解決している誰かがいます

研修のグループ討議では、ある参加者が課題を話すと、
別の人が「それ、うちでは解決しましたよ」と答える場面がよくあります。

その瞬間、「今度、見学に行かせてください」「ぜひ教えてください」と会話が広がります。
これこそが研修の醍醐味です。

デジタル分野の取り組みは共有しやすく、技術機密に触れない範囲で多くの知見を交換できます。
自社では当たり前になっているノウハウでも、他社から見れば“救世主の知恵”になることもあります。
そしてその経験が、互いの自己肯定感を高め、前向きな循環を生み出していきます。

■ 研修の本質は「学び」ではなく「つながり」

結局のところ、研修の価値は「知識を得ること」よりも
「人とつながり、新しい視点を得ること」にあります。

多様な業種・職種の人が集い、課題を共有し、互いに解決策を交換し合う。
そのプロセスの中にこそ、企業を変える“気づき”と“突破口”が潜んでいます。

それが、私が提唱する“研修会の価値”です。

次回は、もう一つの重要テーマ「グループ討議の意義」について、さらに掘り下げていきます。